韓国政界では新型コロナウイルスワクチンの接種を前に、
文在寅(ムン・ジェイン)大統領
が「接種第1号」となるべきかどうかをめぐって論争が起きているという。
保守系野党の「国民の力」に所属するユ・スンミン前議員が19日に、自身のフェイスブックに「アストラゼネカ、大統領がまず接種してこそ、不信を無くすことができる」と題する文章を載せた。
これについて、文政権を支持する与党「共に民主党」のチョン・チョンネ議員は22日「国民の不安をむしろ増幅させる無責任な策略」と反論した。
チョン議員は、ユ前議員と自身との同伴接種を逆提案し、文大統領の接種をあくまでも回避する行動だ。
また、国民の党のアン・チョルス代表も22日、同党の最高委員会議で「アストラゼネカに対する不信や不安の解消のためなら、政府が承諾すれば、私が政治家として、また医療人の一人として、最初にアストラゼネカのワクチンを接種する用意がある」と述べて、第1号接種者となる考えのあることを明らかにし、この論争に加わり注目を浴びる動きをした。
なお、国民の力は同日、野党を批判したチョン・チョンネ議員に集中攻撃を加えた。
国民の力からのソウル市長選出馬を目指すオ・シンファン氏は、チョン議員の示した「文大統領は実験対象なのか」との反応は非常識だと批判した。
ならば、「最初に接種を受ける国民は実験対象だというのか」と反論した。
ハ・テギョン議員は「アストラゼネカのワクチンを接種する国民は毒見役だとでもいうのか」と攻勢を加えた。
与党の民主党は、国民の力は大統領がワクチン接種第1号となれと叫ぶことで、ワクチン不安を煽っている論点をすり替えるべく画策して批判した。
この論調に加勢するシン・ドングン最高委員は「コロナ危機を政治攻勢のイシューにしないでほしい」と注目度を下げる発言で「恐怖を増幅させて反科学を流布することは反社会的策動」と主張した。
大統領府で文大統領を取り巻く高官なども同日「もし国民的不信があるのなら大統領が第1号接種者となることも拒む理由はない」と大見えを切ったが「不信が生じればいつでも検討することを排除しない」と続けた。
また、現在、ワクチン接種を受けたいという人は90%以上にのぼっているため、不信が生じなければ「接種第1号は検討しない」と付け加え、接種しない方向に工作を続けたようだ。
多くの国民がワクチン接種を避けるほど不安が高まっている状況にはないため、「65歳未満」との対象者基準を破ってまで68歳の文大統領がリスクの高い「第1号接種者」となる必要はないと判断しているということでしかない。
中央防疫対策本部のチョン・ウンギョン本部長はこの日の定例ブリーフィングで「現在、予防接種を進めているワクチンは、臨床試験を経て安全性と効果が確認され、許可を受けたもの」と主張し「ワクチン接種を受けるすべての国民は
実験の対象
ではない。
政界のそのような表現は適切でないと思うと述べたうえ「最初に接種する」と述べる政治家に対しても「接種は現在、優先順位を決め、公正性と透明性を持って対象者を管理している」とリスクを政治家が取らないように工作し「現在のところ、決まった順序に沿って接種を進める予定」と述べた。
このチョン本部長は「ただし予防接種に対する国民不安が大きく、懸念が提起される状況」だと判断されれば、(接種の宣伝として)社会の著名人や保健医療界の代表が最初に接種することもありうると主張、国内からの批判回避を意識した発言を続け、現在はそうした状況にはなく、接種同意率がかなり高いため、順序に従って接種を滞りなく進めると説明した。